230223 2022 112分、脚本・監督:早川千絵 邦画分類ですが、フランス、カタール、フィリピンが資金面で協力しているので、一応合作となるようです。
カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門出品作です。いやぁ、ずっしりと重いテーマです。後味、もちろんよくないですが、佳作ですし、おすすめです。現在81歳の倍賞千恵子が78歳役を全編スッピンで演じていますが、見事な演技で、本作の成功は彼女に負うところ、大だと思います。
とっくに大きな社会問題となっている、世界でも突出する日本の高齢化問題を真正面から取り上げています。表向きは多様性重視社会を目指すとはいうものの、実態はこれだけ高齢者比率が高めれば、若年層への歪みは途方もなく大きくなる一方。近未来では、ついに老人狩りが横行、75歳以上の高齢者に命の選択権を認める法案が国会を通っちゃいます。つまり、希望すれば安楽死を認めるという制度!
主人公の、夫に先立たれたミチという高齢者は高齢ゆえに仕事を失い、住む家も追われ、万策尽きて、辿りついた先にあるのはPLAN75。準主役として3人がいます。一人は役所でこのプランを担当する若者、一人は終末介護者の若い女性、そしてもう一人はフィリピンからの出稼ぎの子連れ女性です。三者三様に、ミチの生き方に要所要所で絡みます。巧みな演出です。
ずーっと流れている不協和音を交えた無機質な音楽は、レミ・ブバル(名前からするとフランスかベルギー人)が担当しています。効果的です。カメラワークもとても冴えています。カンヌではカメラ・ドール特別表彰を受けたそうです。