ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「太陽がいっぱい」

230320 PLEIN SOLEIL 仏伊合作 1960  118m 監督:ルネ・クレマン、音楽:ニーノ・ロータ(なんと冒頭のクレジットにはNino Rottaと誤った表記!本当はRota)

愚亭のこれまで見た映画ではずーっとベスト1の作品です。最近、収録したものを久しぶりに見ました。いろいろ再発見があって、何度見ても飽きることがありません。

初めて映画館(渋谷の東急文化会館上階にあった)で見たのは高3の夏でした。もちろん衝撃のラストはよく覚えていますが、その後もテレビやビデオで繰り返し見ています。

作品自体も話題になりましたが、主演のアラン・ドロンの人気が日本で沸騰したのもこの作品でした。デビュー後6本目の作品です。日本でのデビューは前年の「お嬢さん、お手やわらかに!」(Faibles Femmes)という凡作です。

1960年は「太陽・・・」の他にも話題作となったルキーノ・ヴィスコンティの名作「若者のすべて」(Rocco e I Suoi Fratelli)も撮っています。すごいですよね、こんな名作に同じ年に2本も出ているのですから!この時、ドロンは25歳で、まったくスキのない美男子でした。フランス映画界ではおそらく彼に匹敵するとすれば、若死にしたジェラール・フィリップぐらいでしょうか。

ところで、ニーノ・ロータの音楽も有名でしたが、このメロディーが最初に登場するのは前半の終わりぐらいのところです。映画の中ではモンジベロ(Mongibello)と呼ばれる小さな港町が出てくるシーンです。

また冒頭、彼が当時付き合ってたロミー・シュナイダーがほんの端役で登場するのがパンテオンに面するロトンダ広場です。いかなる事情からここにシュナイダーが出演したのか興味深いのですが、ともあれ、ほんの数十秒で、もちろんドロンとの絡みも一切ありません。

また、ヨットの上で殺されたフィリップ(モーリス・ロネ)の恋人、マルジュを演じたマリー・ラフォレは、この時21歳、後にこの作品では自分は若すぎて、ろくな演技ができなかったと残念がっていたそうです。別に大根役者ではなかったし、それなりに上手だったと思いますが、本人には不満しか残らなかったようです。

話題になったラストですが、撮影が行われたのがソレント岬にあるポジターノであると、映画にに超詳しい学友(昨年亡くしましたが)が自身を持って主張していたのですが、いろいろ調べたところ、イスキア島南部のビーチであると判明。今となっては彼の持論を覆すことができないのが残念至極!

全体的には満足していた原作者のパトリシア・ハイスミス、ラストシーンだけは不満だったと伝わっています。完全犯罪をなしとげ、フィリップになりすまし、遺産の一部と恋人まで手に入れたのですから、そりゃC'est le meilleure!(サイコーだ!)ってつぶやくでしょう。

ところで、ここで彼はビーチ・チェアに座っていて、店の女主人から「具合でも悪いの?」と尋ねられ、「なんだって?いや、太陽が眩しいんだよ」と言ってるんですね。その直後に、サイコー発言が飛び出します。すぐそこに刑事たちに見張られているのも知らず。

本作から39年後、アメリカのリメイクが公開されます。「リプリー」です。主演はマット・デイモン。ま、まったくの別物と考えた方がいいでしょう。