ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「マーラー」@AmazonPrime

231115 MAHLER  1974  英国 1h55m 脚本・監督:ケン・ラッセル

くせのある鬼才ケン・ラッセルが作ると、こうした作品になっちゃうんですね。フラッシュバックで、マーラーの子供時代や、ラッセルの妄想とでもいえるような映像が盛んに映し出され、まさにラッセル・ワールドという世界観。

本筋は妻アルマと豪華な個室のコンパートメントでウィーンに向かうマーラー。二人の関係はすでにこの時点でかなり冷え込んでいて、同じ列車に乗り込んだ、アルマに思いを寄せる軍人に誘われるアルマに複雑な眼差しを向けるマーラーの姿が印象的です。

そんな中で、マーラーの脳裏にはさまざまな思いが果てしなく広がります。中でもナチスを彷彿させる格好をしたワグナーの未亡人、コジマが、キリスト教への改宗を決意したマーラーを嘲笑うかのように盛んに攻め立てるような映像が強烈です。

本作は1974年製作ですが、日本公開はなんと1987年となっています。冒頭、ヴィスコンティの「ヴェニスに死す」の一場面を思わせるようなシーンがあり、この作品へのオマージュかと思いましたが、ラッセルは「ヴェニスに死す」を批判的に見ていたらしいので、ギャグとして使用したようです。