ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

藤原歌劇団公演「ファウスト」@東京文化会館

この作品、こんなに長かったかと言うのが正直な印象です。過去に観たことはありますが、遠い昔のことで、忘れてるのかも。途中、2度の休憩時間を引いて3時間15分の長丁場!

冒頭にも少し入りますが、終幕には結構長くバレエシーンが。これはこれで、なかなかの見せ場でもあります。プロダクションによっては、5幕のバレエを全面カットする上演もあるようです。

今回、特に印象に残るのは舞台デザインです。3台の大型スクリーンを移動させるだけの簡便なものなのですが、ここに投影される、極めて精緻な映像が大きな効果を生んでいます。

手法そのものは珍しくはないのですが、投影される映像の質の高さでしょうか。ここまで鮮明な画質は初めて観ました。それと、場面毎に適切な背景を頻繁に入れ替える技にも感心しました。

演出は・・・うーん、もう少し聴衆に親切に分かりやすくしてくれてもよかったんじゃないかな、とか。ストーリー展開に精通していないと、???となりやすい場面もそれなりにあったように感じました。

歌手ではタイトルロールの澤崎一了さんは持ち前の柔らかな美声を巧みにコントールして、見事でした。マルグリットの迫田美帆さん、メフィスト伊藤貴之さんも立派な演唱でした。

中でも驚いたのはヴァランタン役のバリトン井出壮志朗さん!この人、随分まえに、幡ヶ谷駅隣接の小さなホールでマダム・バタフライのシャープレス役をやられたのを偶然見る機会がありました。当時はまだまだ相当荒削りでしたが、いいものを持っていると期待していました。その後、海外留学もされたようで、多分7年ぶりぐらいに聴いたのか、あまりに上手くなっていて、瞬間的に別人かと思ったほどでした。いやあ、嬉しいですねぇ、こういうのは!

阿部加奈子さんによる東フィル、藤原歌劇団合唱(団とは言わないのです)も文句なし!全部がよく整っていて、素晴らしかった!満足のいく上演でした。

それにしても、最近は幕間、ロビーをうろついても知っている顔がほとんど見当たらず、時の移ろいを感じて、寂しい限りです。