ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「アイーダ」演奏会形式@かつしかシンフォニーヒルズ

230115 

上演機会の比較的多い演目ですが、演奏会形式で観るのは・・・初めてかも。なんたってこのチケット代ですからね、予算、そうとう切り詰めざるを得ません。それでも、3回の休憩時間を入れ3時間20分かけての全幕上演、見応え、たっぷりでした!

合唱団の中に以前一緒に歌った仲間がいて、彼のおかげで素晴らしい観劇ができました。(しかも少し安く!)持つべきものはこうした友人ですね。(笑)

ダブルキャストで毎回悩むわけです。今回は会場が遠いという理由で昼公演を選択しました。どちらの組にも以前から贔屓にしている歌手さんが何人もいるので、両組を見るのがベストであることは重々承知の介!歌い手の好みを言い出せばキリがないのですが、とても満足の行く公演でした。

ラダメスは、遠い昔に聞いた記憶しかないのですが、久しぶりに聞いて、その進化ぶりに正直、びっくりでした。特に若い時にしか聞いてない場合は、こうしたことはよくあることだと思います。プロの歌手ですから、当然その間精進され続けているわけですからね。自分の無知を恥じるばかりでした。

アイーダ、斯界ではあまりにも有名な方ですから、細かい論評は控えます。実年齢からは到底想像できない完成度が超高い歌いっぷり、健在でした。恐れ入りました。この人の放つオーラのなんとも凄まじいのに圧倒されっぱなしでございました。

アムネリスの石橋さんは、この舞台で何年か前にヴェルレクでご一緒しました。容姿も声も大変艶やかで、美しいブルーの衣装をまとって一段と華やかでした。

ランフィスの田中さんの、ホンマもんのバスの響き、実に見事でした。ここまで低音がバリバリ響く方、そうはいませんからねぇ。今後のご活躍、楽しみです。

アモナズロ、愚亭は初めてこの方、聴かせていただきましたが、すっごい声量にびっくりしました。日本のオペラファンが初めてと言っていいほど、ほんとのイタリア歌劇に触れた1961年のNHK公演におけるアイーダでは、レジェンド、マリオ・デル・モナコが歌った清きアイーダにファンは狂喜しましたが、アモナズロのアルド・プロッティにも大喝采だったのをよく覚えています。彼は風貌もいかにもアモナズロってな感じですが声と表現力が圧倒的でした。ちょっとそんな大昔のことを思い出せてくれた堀内さんでした。

エジプト王、高橋さん、出てきた時からカーテンコールまで終始、王としての威厳を保とうとされていましたね。この方には何年か前、日声協主催の合唱で、バスの応援で来られていろいろ教えていただきました。

伝令の飯沼さんがまたいいお声で、第一声を聞いて、「あら、これって、どなただっけ?」と思わず手元のプログラムに目を落としました。滑らかな発声で、あきらかに異なる声質がラダメスを引き立てているように感じました。出番が少ないのがもったいない!

巫女長、日本人離れしたすらりとした容姿には登場した瞬間から目を奪われました。おかげで歌をじっくり拝聴するのを忘れたかも。

そして合唱団、前述の仲間がいるからというわけではありませんが、一言、素晴らしい!!このレ・ヴォーチというアマチュアの団体は合唱指導もマエストロ安藤が直々にされるわけで、私も以前、この舞台に出せてもらったヴェルディのレクイエムで体験済みですから、よく分かります。

ヴェルディの時に初めてマエストロに初めてお目にかかったのですが、写真で見ていたよりずーっとお若くて驚いたのを覚えています。しかも、自ら集金したり、領収書作ったり、なにからなにまでご自身でなさるんですね。確か録音やヴィデオにも明るくて、ま、性分なんでしょうけどね。合唱仲間が会場に落とし物をした時も、ご自分で落とし主に返す算段までされて・・・ま、そこまでやるマエストロは世界でも稀でしょう。

凱旋の場面でのアイーダトランペットの響きがずーっと頭にこびりついたままです。

久しぶりに「鱒」の生演奏を

230114 マタイ受難曲仲間のベーシスト、AIさんが出演するので、川崎まで聴きに行きました。

ミューザ川崎の市民交流室という、かなり限られたスペースが会場で、8割方埋まっていました。最後列で聞かせてもらいました。

マチュアのコンサートなので、無料でした。雨のせいかバスが遅延して、到着したのが演奏開始時間直後でした。

マタイ受難曲の練習では、私と同じパートを歌っておられます。しかも、マエストロの指示でユダのソロパートも歌われています。第2オケでコンバスを弾きながら、ユダのソロも歌うことになるので、なかなか愉快です。コンバス奏者ゆえか、声もコンバスなのです。(笑)

「鱒」はシューベルトの作品の中でもとりわけ好きな作品で、昔はよく聴きに行ったものです。今日、久しぶりに聞いて、どの楽章も素晴らしいし、本当に名曲と改めて思いました。

AIさん、チェリストの陰に入っちゃいました。てっきり前列に勢揃いするかと思っていたら、そそくさと楽器抱えて慌ただしく袖にひっこんじゃって、写真はこれだけ。トホホ!陣取ったアングルが悪かった!マタイ受難曲の合唱練習にも楽器を持ち込むらしいので楽しみです。

エルヴィス・ソサエティ主催エルヴィス生誕祭@日本橋公会堂

230108 昔の職場の後輩で熱烈なエルヴィスファンから誘われて、新年早々、日本橋公会堂へ行きました。私も最近、映画「エルヴィス」を観たばかりで、彼の偉大さを再認識したばかりなので、楽しみにしていました。下のチラシにあるように、この日は彼の誕生日、生きていれば88歳!ちなみに没年は1977年、享年42とは!いかにも惜しまれる早死にでしたね。

当然、エルヴィスファンとなれば、高齢者が多いものと決めてかかっていましたが、意外にも会場には若い世代もいて、いささか驚いた次第です。愚亭が初めてエルヴィスをラジオで聴いたのは中学2年か3年頃でしょうか。多分「ラビ・ミー・テンダー」だったように記憶しています。また映画として最後に見たのは1974年に駐在中のパリで見た「エルヴィス・オン・ツアー」だったと思います。愚亭にとっては、やはり少し後に登場してくるザ・ビートルズよりも深く印象に残ったレジェンドです。

今回私を誘ってくれた熱狂的ファンは、遠くアメリカのミシシッピー州のトゥペロ(Tupelo)まで行って彼の生家まで見てきたというから、その傾倒ぶりが伺えます。彼が歌った歌はもちろん全曲を聴いているし、エルヴィスグッズのコレクションもハンパではないでしょう。

まずは史上初のエルヴィスの衛星生中継が行われた際のテレビ映像を画面に映し出して、日本の中継会場、まいまで言うライブビューイング会場の共立講堂からの様子を徳光アナが伝え、そしてスタジオではフランキー堺と松岡きっこが司会を務めました。画面ではエルヴィスを乗せたヘリがホノルルのヒルトン・ハワイアン・ヴィレッジ到着の瞬間とその後の熱狂的な歓迎ぶりの様子などを伝えます。

それからトークショーです。

左、湯川れい子さん、中央、牛窪成宏さん、右、司会のビリー諸川さん

これが面白かった。特に音楽プロデューサーである牛窪氏の、契約時から演奏会当日の裏話が実に痛快でした。結構なお年なのですが、まったくひょうひょうと淡々とした語り口に好感を覚えました。こう言う方のおしゃべりってーのは嘘がないし、手柄話として自慢するわけでないから、いちいち深く共感できるわけですね。

この企画、最初の段階で、まず牛窪さんのところに持ち込まれたそうです。そこから電通につなぎ、さらに当時、民放ではダントツだった日テレに持ち込まれてまとまったようです。ただ、初の衛星生中継ということで、中継中に電波に不具合が発生して画像が中断するようなことにでもなったら一大事!そこが最も関係者を悩ませた大きなリスクだったようです。幸い、それも杞憂に終わり、大成功だったと。

そして、最後にコンサートの模様が細大漏らさず映し出されました。もちろん映像は当時のものですからそれなりの粗さはあるものの、音声は大変クリアで、聞き応え十分でした。全部で23曲をぶっとおしで歌う、その圧倒的なド迫力には今更ながら唸りましたね。歌手として絶頂期だし、彼の本当のうまさがたっぷりと伝わりました。やはり、彼がキング・オブ・ロックンロールというのは、まごうことなき真実でしょうし、このジャンルを世界に認知させた最大の功労者であることは疑いようがありません。いささか興奮の面持ちで会場を後にしました。

「アドリフト 41日間の漂流」@Amazon Prime

221231 ADRIFT (漂流)英米 2018 1h36m 監督:バルタサール・コウマクアアイスランド出身、ゆえにカタカナ表記は不確か。下のポスターではコルマクウル)

タイトルと上の写真で大体、展開が読めてしまいますね。まずは、これって実話なんです。そこがすごいです。

漂流シーンがメインになるのは当たり前で、合間合間にフラッシュバックで遡って挿話的に過去のシーンが描かれます。

若い冒険好きの男女がタヒチのような島で出会えば(ここは脚色で実際は違ったようです)、まあたちまち意気投合。そこへ偶然出会った旧知の老夫婦から急に家族の事情でロンドンに発つので、自分たちの豪華ヨットをサンディエゴへ回航してくれないか、もちろん報酬ははずむからと。

そりゃ飛びつきますよね、こんな話。女の方は自分がそこから来ているので、今、帰るのを渋りますが、男とすでに恋仲でもあり、最終的に承諾します。

出航したはいいけど、しばらくすると巨大ハリケーンに襲われヨットは完全に裏返しに。でもなんとか復元しますが・・・・運命を恨みます。怪我はしますが、幸い二人ともなんとか生存してあとは風まかせで漂流すること、実に41日!しかも、本当のハッピーエンドではありません。

映画の1時間20分辺りで、二人とも朦朧とし、幻影を見たりしているうちに、女は「もう行ってもいいわ」などと口走っています。直後、脚と肋骨に大怪我していた男は波に呑まれてしまうのですが、女は気づいたのか、気づいてないのか・・・哀れです。

ちょっと辛いというか、せっかくもうちょっとというところだけに、悲しいというか、運命を恨みますね。でも、それまでは運命に微笑まれてもいたわけで、仕方ないんですかねぇ。

この海上での撮影はそうとう厳しかったと思われます。どうやって撮影したのか、カメラワークに圧倒されます。クルーも含め全員が船酔いに参っていたそうですし、肌が日焼けしてぼろぼろになっていたでしょう。メイクだけでは、無理(怪我のシーンは別として)でしょうから。よく頑張ったと思います、タミー(シェイリーン・ウッドリー)は特に。

 

「黒の魂」@Amazon Prime

221230 ANIME NERE (邦題そのまま)伊 2014 1h49m 監督:フランチェスコ・ムンズィ(共同で脚本も)

タイトルから想像されるように、かなり暗い作品です。特殊な世界を描いがクライム・サスペンス。なかなかの力作で、愚亭には見応えタップリでした。2015年のイタリア映画祭で上映されたようですが、まったく記憶がありません。その後、一般館で上映されなかったかも。

シチリアのマフィアと並ぶイタリアの4大犯罪組織、カラッブリアを根城とするンドランゲタ内の抗争を描いています。3兄弟のうち、三男のルイージは麻薬ディーラー、次男ロッコはミラノで同じく麻薬を事業化して一財産を築いて、いわば勝ち組。そして長男、ルチャーノのみ生業として地元でヤギの牧畜を地味にやっています。

しかし、ルチャーノの息子レオが地元で一悶着をひき起こし、叔父を頼ってミラノへ、いわば逃避するのですが、抗争相手から狙われ、三男ルイージが暗殺され、地元では一触即発の緊迫した事態へと。

まさかの終盤の展開に息を呑みます。うまく作られていて感心しますが、後味は、よろしくないです。ま、そういう作品ですから仕方ないですが。

ちなみにルイージ役のマルコ・レオナルディは、「ニュー・シネマ・パラダイス」でトトの成人した役を演じていたらしいですが、まったく気づきませんでした。あまり特徴のない顔ですしね。他に愚亭の知った俳優は出ていません。