ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「十三人の刺客」

f:id:grappatei:20100927220357j:image:left100927 109シネマズ川崎 141分 
2時間20分のうち、1時間は壮絶な戦闘シーン。ここまで徹底的に見せ場を作った作品は珍しい。
三池崇史監督、まだ50歳でこの作品数の多さにはたまげる。結構くだらない作品も多い。因みに愚亭がこれまでに見た作品はない。でも、特に時代劇が得意というわけではなさそうだ。昨年のNHK大河ドラマ「天地人」では刈安兵庫役で出演している。

殺陣のシーンの凝りようは尋常ではない。観客を楽しませる工夫、見せ場をふんだんに盛り込んでいる。ただ、血しぶきがドバっと、ということもなく、寧ろ抑えている。「砦」を俯瞰したり、立体的に、しかもすばやく動かすカメラワークも冴えている。

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スマップの稲垣吾郎が意外に上手い。途方もなく残忍で、極悪非道のバカ殿、明石藩主・松平斉韶を実に巧みに演じている。それと、13人目の山の民、伊勢谷友介(↑の右)だが、長身、端正なマスクで、これまでそれを生かした数々の役を演じてきたのに、よくぞこんなみょうちくりんな山猿役を引き受けたものだ。成功しているとは思わないが、監督の狙いがイマイチ分からない。ちょっと勿体ないようでもある。

このバカ殿、どうしようもない奴だが、時々結構まともなことも言うという妙なキャラ。こんな人物が将軍の弟というだけの事情で、幕府老中になろうっていうんだから、たまらない。

天下国家のため、ご政道に照らしてこれを亡きものにしようということで、暗殺組織が結成される。でも、結局13人しか集まらない。一方、標的となる参勤交代の一団は300人。この圧倒的な差で勝てるのか。そこで、知恵を絞りに絞って練った作戦とは。これぞ奇想天外にも、標的が通ると予測する集落をまるまる買い取って、砦に仕立ててしまおうってんだから、凄い!

惜しむらくは、袋のねずみにした圧倒的に数に勝る敵を、なぜもっと徹底的に弓で責め続けなかったのか。まだまだ弓のストックも十分というのに。侍の矜持とでも言うのか、地上戦でけりをつけたい気持ちがはやったとしか言いようがない。リーダーの作戦ミス?

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「スリー・ハンドレッド」というハリウッド作品があった。これはレオニダス率いるスパルタ精鋭300人でペルシャ軍100万人に対抗しようという話だったが、ま、似たようなもの。これこそ(バカ殿抹殺)が正義とする暗殺団のリーダー、御目付役・島田新左衛門(役所広司)と、武士の本分はおのが殿を命をかけて守ることにあるとする斉韶の腹心・鬼頭半兵衛(市村正親)は皮肉なことに、嘗て同じ道場で腕を磨き合った仲。それが今や敵味方に分かれて戦うことに。(↑のシーン)

まぁ結末は、ほぼ予想通りで、意外性はないが、全編、なかなかうまく作ってある。戦闘シーンが1時間もあると見る方もつい力が入ってしまい、疲れる。
(画像はすべてALLCINEMA on lineから)

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