200219 LES PLUS BELLES ANNÉES D'UNE VIE (人生最良の年々)仏 90分 製作(共)・脚本・監督:クロード・ルルーシュ
1966年公開の「男と女」、フランシス・レイの名曲と共に映像が一つ一ついつでも蘇るほど印象に残った作品。20年後の「男と女2」は未見。評判はいまいちだったみたい。
そして50年後の今回の作品、老人ホームに彼を彼女が訪ねるシーンから。アヌークさんは87歳で、背も縮んだし、ふわっとした黒の衣装で巧みに隠してはいるが、引力には逆らえない様子はありあり。でもそれなりに美しさを保っているのは見事。
ジャン・ルイの方は三つ上だが、こちらはまさによぼよぼの老人で、昔の面影はほぼ皆無。「俺も昔は美男だったし、女には困らなかったんだよ」っていうセリフ、案外、本人の口癖かも。
認知症によるまだらボケで、時々正気に戻るような展開が楽しいし、セリフ回しもうまいのには感心する。「女は山のように知ってるけど、アンヌほどすばらしい女はいなかったなぁ。そう言えば、あんたはアンヌによく似ているなぁ。髪をかきあげる素敵な仕草は彼女そのものだワ!」
何度か会ううちに、やっと目の前の女がアンヌ自身であることに気づくジャン・ルイ、「こんな年寄りばっかしかいないところはうんざりだから、脱走することに決めた。一緒に来ないか?」
彼女の乗ってきたシトロエン2CVに乗って田舎道を疾走し、交通警察に停止させられると「俺を誰だと思ってんだ。あの伝説のレーサー、ジャン=ルイ・デュロックだぜ!」と啖呵を切るが、若い警察官だから知るわけもないし、相手にしない。この場面は夢か妄想の映像化なのだが、結構笑わせてくれる場面が多いのは意外。
劇中に例のフランシス・レイのメロディーが流れ始めると不覚にもうるうる。昔の映像をふんだんに盛り込みながら、金もかけずによくやるよねぇ、クロード・ルルーシュ!ちなみにフランシス・レイは本作の音楽を担当した後、急死しているから、これが遺作というのも因縁を感じる。彼が作った主題歌はニコール・コロワジールとカロージェロいう歌手が歌っているが、これがまたなかなかいい。
彼らの一人息子と一人娘(尤もジャン=ルイの方は他で設けた娘がいて、なんとモニカ・ベルッチさんがその娘エレーナになって登場!)、それぞれの親に伴われて子供の頃に何度もあっていて、彼らにとってもこの50年後の再会を機に、どちらも独り身ゆえ、自然に距離を縮めていくらしい海岸の光景がしみじみした余韻を残す。
ところで、タイトルは現代では日々でなくaneés(複数年)となっているのだが、訳しにくいので、jours(日々)に変えたのだろう。こういう変更は歓迎だ。
#7 画像はIMBdから、動画はYouTubeから。