ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

オペレッタ「ボッカッチョ」@文化シャッターホール

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先日ある音楽会の幕間でばったりお会いしたソプラノの三宅理恵からたまたま入手した演奏会情報。ご本人の演奏会にはこの1年、まった行っていないこともあり、行くことを即決。

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音楽監督から出演者のほぼ全員を存じ上げており、楽しみに春日まで出かけた。162席はほぼ満席。ただし、客席の9割が高齢の女性、1割が男性や子供。これはちょっと意外だ。浅草オペラの影響かしらん。

有名な楽曲は、例の「恋はやぁさし〜♩野辺のはぁなよ〜♪」だけだが、展開のテンポがよく、無駄がなく、要所要所に綺麗な楽曲が入り、誰にでも分かりやすいのがこれだけ人気が出ている最大の理由だろう。全て日本語なのだが、終幕に近いところで、1曲だけイタリア語での二重唱が入る。もちろん字幕も説明もなし。

タイトルロールの押川浩士は、高音が楽に出るいわゆるハイ・バリトンというジャンルかも。ひときわ存在感があった。他の出演者も全員慣れたもので、しっかりした歌唱と演技で、大いに楽しませてもらった。

フランツ・フォン・スッペの原曲はもっと長いらしいが、それをうまく料理した角岳史の訳詞/台本が光る。舞台美術・装置もこの規模の公演にしては、かなり本確定であった。

ウィキで調べたら、ジョヴァンニ・ボッカッチョ(1313-1371)は、ダンテ・アリギエーリより50歳年下らしいがもっとも早いダンテの理解者・信奉者となり、単に戯曲(Commedia)であった作品にDivinaを付けて、Divina Commedia(神曲)として功績は小さくない。

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ボッカッチョを演じたバリトン 押川浩士と、フィアンメッタ役、ソプラノ三宅理恵

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相変わらずチャーミングな姿と美声の三宅理恵、本役もまさにぴったし!

#48  (文中敬称略)

創作オペレッタを観に

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かつて、7,8回は通ったことのある神田岩本町で営業していたオペラサロン「トナカイ」、何年か前に浜松町に舞台を移して主催公演をしている。イタリアンレストラン「サン・ミケーレ」という、やや目立たぬ場所のビルの5階だから、あまり立地がいいとは言えないが、そこが新しい会場だ。ただ、食事付きが原則なので、初期の岩本町時代とは少しばかりシステムが異なる。

ここはこれまで一度も来る機会がなかったが、フォローしている青栁・江口夫妻が出演というので、自分の誕生日の二日前ということもあり、かみさんを連れて、早めの誕生日ディナーと洒落込んだ。

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事前情報で、演出の三浦安がかなりハチャメチャな構成・演出を考えていると聞いていたので、びっくりはしなかったが、出演陣のコミック・センスには改めて感嘆あるのみ。

もともとこの夫婦、そういうお笑いに対する優れた感覚があることは知っていたし、これまでも何度かお笑いの舞台に紛れ込んだような錯覚を覚える舞台も見ているが、今日は、冒頭からそのセンスが全開!加えてエリカ役の倉本絵里もまた優れた歌唱力とお笑いセンスで、舞台を盛り上げ、終始抱腹絶倒。

それにしても江口二美の方は、そもそもお笑いに行くかオペラ歌手に進むか人生の岐路に立たされたらしいから、かなり本格派だけど、ご主人の青栁素晴がここまで笑わせてくれるのかと、少しばかり意外だった。

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ご覧のように、全体に「こうもり」をベースにして構成された歌喜劇と思えば良い。時折、真面目になって「歌に生き、恋に生き」、「復讐の炎は・・・」、「見よ、恐ろしき火を」などの名アリアが含まれるが、多分歌う側もだろう、こちらもリアクションに戸惑うことも。今まで散々ヘラヘラしていて、急にこうした名曲、難曲に切り替えるのは、結構大変だったと思う。

プログラムの2nd Stageの前に〜お祝い〜とあるのは、この月に誕生日や記念日を迎える来場客のために、出演者が当該テーブルへ行って、Happy Birthdayを歌い、その後、歌手たちと一緒にカメラに収まるという、まあお定まりの趣向。あらかじめ写真を撮られることを予想していなかったおかみさん、もっといい格好をしてくれば良かったと。後の祭り。この時の写真は、後日掲載予定。(かみさんの許可が取れればだが)

ともあれ、かみさんも大喜び。久々に夫婦共々、大いに笑った夕べとなった。

#47(文中敬称略)

ハイドリッヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦

170822 原題:ANTHROPOID (類人猿)チェコ・仏・英合作 120分 製作・脚本・撮影・監督:ショーン・エリス(47歳、英国)

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この時代(1942年)前後のナチが絡む作品はどうしても見たくなる。よくできた作品だけに、関東地方1館上映は実にもったいない。

第二次大戦下のチェコスロヴァキアを舞台にした実話だそうだ。ロンドンに本部を置くチェコスロヴァキアの亡命政府の密命を帯びて、落下傘でプラハ近郊に降り立つ6名。ナチ三番目の実力者、ラインハルト・ハイドリッヒ暗殺計画、アンスロポイド作戦始動の瞬間だ。

現地の仲間と連絡を取り合うと、この計画を実行に移したら、ナチはプラハを壊滅させるぐらいの報復に出るからと、取り合わない。しかし、本部の指令ならと、結局は認めざるを得なくなる。

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周到な計画を立てたつもりだったのに、なんと弾が出ないって、アンタ、そりゃないぜよ。仲間が投げた手榴弾は見事に車を大破するが、致命傷には至らず、逆に撃ち返され、あわやというところで、逃げ延びる。作戦失敗!と思ったら、結局病院でハイドリッヒの死亡が確認されたと公表される。

さあ、そこからどうするか。もどかしいのは、事後の計画が実に杜撰ということだ。ナチの報復が当然予想されながら、犠牲者がどんどん出始めると6人に動揺が走るって、そんなこと計算済みじゃなかったのかよ、オイオイ!

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ま、結局、大聖堂に逃げ込んだものの、文字通り袋の鼠。ほぼ予想通りの結末となるが、大聖堂での戦闘シーンの凄まじさはかなりの見せ場になっているが、どうも消化不良感は否めない。

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エンドロールの字幕で、⬆︎ハイドリッヒ一人の命に対する報復で殺された市民は5,000人というから言葉を失う。それだけの犠牲者出してまでの価値、あったんだろうか、いささか疑問に思ってしまう。ハイドリッヒが死んだことで、連合軍、ないしチェコスロヴァキアにとって、有利な展開になったのか、検証して欲しいところだ。

全体にセピア色っぽい彩度で、時代感たっぷり。監督自らがカメラを回すという、なんでも自分でやりたがる人のようだが、このカメラワークがまた冴えていること!!

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これ、撮影風景だけど、盾みたいなもの持ってるって〜ことは、何かが飛び散るんだろうか。

蛇足ながら、この邦題は上手い方だろう。原題のままでは、なんのことやら。ただ、「・・・撃て」で止めておけばいいのに、余計な副題をくっつけたのは失敗だろう。そこまで説明を加える必要はないし、きりがない。

#54 画像はIMDbから

 

二期会サマーコンサート2017 @さくらホール(渋谷)

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恒例のイベント。以前は銀座のヤマハホールで開催されていたように思う。それと抽選制だったから、最近は行く機会が減っていた。今回からは渋谷のさくらホールでの開催。抽選制もなくなり、普通のコンサートになった。

この会場は、舞台の空間が広く、音響がいいので、実に聴きやすくて、好きなホールだ。比較しては申し訳ないが、つい先だって聞いたサンパール荒川でのマダムバタフライでは、装置の関係で反響板を外しているから、まったく声が響かず、そのくせ、オケが手前にあるから、やたら伴奏が大きく聞こえて、歌い手には気の毒だったことを思い出した。

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みなさん、この暑い中、熱演の連続で、存分に楽しめた。山田精一が欠場で、進行役もやっていた大野徹也が急遽代役を勤めた。また楽しみにしていた岸 奈美子も体調不良か、欠場で、大いに落胆!

どの組み合わせも素晴らしかったのだが、とりわけ印象に残ったのは、

野村光洋大西ゆかと歌ったドン・パスクアーレからの二重唱。彼の持つ重い声、それでいながら軽妙な演技には、今日も引きずり込まれた。

久しぶりに聞いた鷲尾麻衣、今や二児の母。貫禄も出て、その分、以前より声も艶やかさを増したように感じられた。小鉄和宏との二重唱は、さすがの名唱。小鉄は、ベテランらしく、嫌味なくうまくリードしていた。

醍醐園佳水船桂太郎の二重唱、美男美女で、そちらに寧ろ神経が行ってしまっていた。水船もすでにベテラン入り。輝く美声は、まだまだ若い者には負けられない気迫のようなものを感じた。

糸賀修平上江隼人の二重唱も聴かせた!上江もベテランだが、糸賀が猛追して、ほぼ互角の演唱で聴き入った。

先日、杉並のカヴァレリアで聴いたばかりの小泉詠子ロッシーニも上手い!アジリタもよく効いていて、芸域が結構広いことを知った。

ソロでは、

1年ぶりに聞いた前川は、この難しいアリアを見事に歌った。やや太めのテノールで、高音域もぶれず、何か昔のサルヴァトーレ・リチートラを思わせるような歌いっぷりであった。ヴィヴラートをほとんどかけていないのは、意外だった。あえてそうしているようだ。かかり過ぎるよりは余程いいが。

これまた久しぶりの大澤一彰、特別滑らかな歌唱は健在。スペ〜〜〜ランツァもなんのその!

大沼 徹、もう何度も聴いているが、この名曲はあまりこれまで聴いたことがない。確かに声質からすると、少し違うかなと思わせる部分もないわけではないが、そこは芸達者な彼のこと、終わってみれば、すっかり魅了されていた。

大御所の永井和子、大倉由紀江、黒田 博、場内の喝采が一段と大きかった。

(新入会員による)クリスタルコーナーで登場した二人のソプラノ、完成形までもう少しだが、フレッシュな印象で好感を持った。

ピアニストの山岸茂人、伴奏者に対する拍手が今日ほど多かったことは余りないような気がする。外連味のない、そして端正で、キリッと分をわきまえた弾き方、今日登場の歌手たちはきっと歌いやすかったのではないか。

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先月のオペラマニア並みの出演者の多さ!全員乗り切るのにいっぱいいっぱい。

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左から永井和子、糸賀修平、上江隼人、小鉄和広、鷲尾麻衣、小林由樹、小泉詠子、野村光洋、大西ゆか

#46 文中敬称略

 

「ボストン美術館の至宝展」- 東西の名品、珠玉のコレクション

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構成は、

I 異国を旅したボストニアンたち

1 古代エジプト美術

2 中国美術

3 日本美術

II 「グランド・ツアー」ー ヨーロッパ美術を集めたボストニアンたち

4 フランス絵画

III アメリカン・ドリーム ー 自国の美術を収集するボストニアンたち

5 アメリカ絵画

IV 同時代の美術へ ー 未来に向かう美術館

6 版画・写真

7 現代美術

出品作は80点。一言で言うと総花的で、いささか看板倒れ。上記のように苦心の章立てだが、一般客への訴求力はイマイチかも。それでも、今日は小雨で、10月の気温の中、当方の予想を裏切る混み具合。3時過ぎに着いたら、30分待ちのプラカード。先日、普通の時間帯に行ったかみさんも、別の日に行った友人も、ガラガラだったと言っていたので、油断した。

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日本美術はさすがのボストン美術館、いいものを山のように持っていて、今回の出品は、ごくごく一部でしかない。その中で曾我蕭白の「風仙図屏風」と「飲中八仙図」が圧巻!

また、左の「涅槃図」(英 一蝶)にはかなりの人だかり。周辺で嘆き悲しむ人物像より、鬼とか動物、昆虫などを細々描きこんでいるのを見たいがため、列が動かない。

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左のルーアン大聖堂だが、学生時代、初めて印象画の素晴らしさを意識したのがルーブル(当時はジュー・ドゥ・ポム)で見たこの作品群。ボストン美術館も所有していたのは知らなかった。30点も描いているから、ルーブル(オルセー)以外にも所有する美術館があるのは当然か。

右はいかにもセザンヌっぽい作品。ただし、かなり小さい作品。

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ミレーの「編み物のお稽古」この可愛らしい作品だが、他にも同じテーマの作品を描いている。

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他に、フランス絵画では、風景画家として名高いアルフレッド・シスレーの珍しい静物画(「卓上のブドウとクルミ」)が出展されていた。

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アメリカ絵画では、断然ジョン・シンガー・サージェントが素晴らしい。

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入口の混雑ぶり。実際には、20分ほどで入れた。

 

画像の一部は同展の公式ホームページより拝借。