220121 THE GREAT CARUSO (偉大なるカルーゾ)、1951年、米、109分、原作:ドロシー・カルーゾ(カルーゾ夫人)、監督:リチャード・ソープ
不世出と言われたナポリ出身のオペラ歌手の成功物語。主演のマリオ・ランツァがカルーゾを演じていて、歌われた著名なオペラ・アリア、数知れず、それだけでもオペラファンには楽しめます。奥さんのドロシーは、イタリア語ではドロテアとなるのですが、映画の中では、彼はドーロと呼んでいます。D'oroはイタリア語では「黄金の」という意味になり、それでこのように呼んだんでしょう。想像ですが。
奥さん役にアン・ブライス。横道にそれますが、愚亭の姉が一番好きだったハリウッド女優の一人。改めて見ると、それほどの魅力は感じないのと、アメリカ人にしてはずいぶん小柄という印象。多分、フランソワーズ・アルヌール級で160cmなかったと思われます。マリオ・ランツァも上背はあまりないので、バランス的にはよかったのでしょう。
横道ついでに、この作品、日本公開が製作された翌年の1952年です。愚亭はこれをリアルタイムで見ています。東劇でした。その頃、住んでいた豊洲から一番近いロードショー劇場でした。小学生ですから、ほぼ中身は覚えていません。ただ色がきれいだな、ということと、アメリカはすごいな、と言う程度の感想でした。
カルーゾ(カルーソでもいいのですが、ゾの方に近い発音です)は不思議なことに、マリオ・ランツァが生まれた1921年に亡くなっています。48歳でした。まるでカルーゾの生まれ変わりのような気がします。カルーゾがどれほど偉大な歌手だったかについては、当時の音源がわずかに残されている程度で、よく分かりません。
映画の中で歌うランツァ、上手いです。かなり歌い方に特徴があるのがよく分かります。あれはカルーゾを真似たのかランツァ独自の唱法なのか、多分後者でしょう。付点をはねたり、極端に短くしてみたり、間合いの取り方が独特です。装飾音符もふんだんに入れたりもしています。ある種の遊び心でもあるんでしょうかね。
彼は不遇の幼少時、聖歌隊でその美声を認められていたのですが家庭が貧しく音楽の道に進むことができません。パトロン的存在だった小麦粉製造会社社長の令嬢ムゼッタと恋仲になり、いずれ入婿、跡取りとなるはずでした。でも、歌手の夢捨てがたく・・・。
一気に一流オペラ歌手の仲間入りで、メトロポリタン歌劇場へのデビューとなります。そこでの出会いがこの劇場の事実上のオーナーの一人娘、ドロシー(アン・ブライス)で、やがて結婚を誓う仲に。でもここでも父親がたちはだかります。ろくにマナーも知らない田舎者をまったく相手にしません。ま、確かに写真で見る限り、猪首、短躯、ビヤ樽腹で、風采もまったくぱっとしないですしねぇ。
冒頭、ナポリのシーンがいきなり英語で始まったのにはかなりがっかりしましたが、ハリウッド製ですから、そこは文句を言うところじゃないですね。でも、後半は意識的にイタリア語が相当入ってきて、それらしくなります。
ランツァは実はアメリカ生まれのアメリカ人です。この映画出演の後、しばらくしてローマに移住します。おそらく食生活の乱れや過度の飲酒からでしょうか、健康が徐々にむしばまれ、1959年に亡くなります。享年38!!短命だったカルーゾより10年も短い人生でした。