ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「メルダ、メルダ、メルダ!!」

230506 先日イタリア映画祭で見た作品で、この言葉が何度か登場します。これって、クソ!という、本来の意味とは別に、舞台の成功を祈る、みたいなおまじないの言葉として使われます。面白いことに、フランス、スペイン、そして多分ポルトガルというラテン系の国では共通して使われるところが面白いです。イタリア語からそれぞれ、merda(伊), merde(仏), mierda(西), merda(葡)と、よく似ています。

諸説あるようですが、19世紀、劇場へ来る上流階級は馬車で正面玄関に乗り付けます。当然、馬は玄関で糞も垂れるわけで、その量が多いほど観客が多いということから糞の量が多いほど盛況ということに。

一方、イタリアではこの種のおまじないに使われる言葉はむしろイン・ボッカ・アル・ルーポ、In bocca al lupo, 狼の口の中へという訳のわからない言葉がひんぱんに使われます。狼の口の中に入るほど勇気を持って、ということかとも思いますが、なんか日本人にはしっくりきません。愚亭も学生時代、イタリアへ行って、この言葉をなんども浴びましたが、当初は「何言ってんだろう?」って感じ。だいぶ後になって本当の意味を知った次第。

ま、「がんばって!」ということなんですが、それに対する言葉がGrazieではだめなんですね。クレーピ(Crepi il lupo!)、狼よ、くたばれ!というようです。でも、最近はViva(生きるんだ!)と返す例もあるとか。狼というのはローマの街の起源となったロムルスとレムスの事例の通り、割りにイタリア人には身近な動物ということも忘れてはいけませんね。

ドイツでは、Toi, toi, toiというのが一般的なようです。さらに英米では、Break a leg、直訳では脚を折れ!となりますが、ここのlegは舞台の袖幕のことを指すようです。袖幕(leg)から出て観客の前に立ち、お金を稼ぐことができることを祈ってこう言ったということのようですが、これも諸説あるらしいです。

ひるがえって日本では、この種の面白い言い回しって、ありますかね?