ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「コリーニ事件」@Amazon Prime Video

220502 THE COLLINI CASE 2019 独 監督:マルコ・コロイツパイントナー、脚本:クリスチャン・スバート、原作:フェルディナント・フォン・シーラッハ 

たまたまいい作品を見つけました。タイトルがイタリア人の名前なんで、詳細をチェックしたら・・・それも戦争秘話に属するものでした。現在の舞台はドイツなんですが、事件の発端はイタリアです。

「あれから何十年だろう、俺は今やっと親父の仇をとったことになる。あとはもうどうでもよいのだ。残り少ない人生、一生牢獄につながれようと構やしない。やっと本懐を遂げた満足感なのか、いや、むしろなにか空虚さを感じる。」

中伊、ピサ近くの寒村モンテ・カティーニ出身のファブリーツィオ・コッリーニ(懐かしや、フランコ・ネロ!)は、靴の裏に血糊をつけたまま、階下のホテルロビーへ降り立つと、よろよろと放心したようにソファに身を預けるのでした。

このようにして、事件の幕が開くのです。殺された一流企業のオーナーであるハンス・マイヤーの養子で、現在は弁護士となったトルコ人、カスパー・ライネン(エリアス・ムバレク、ドイツ生まれのドイツ人だが、名前と顔つきで中東系)が、なんと初仕事に割り振られたのが当該事件!自分の育ての親の殺人犯を弁護することになるとは、なんという運命の巡り合わせでしょうか。

大いに逡巡しますが、職業意識が勝り、国選弁護人としてファブリーツィオの弁護を引き受けることになります。当然、周囲の軋轢、とりわけマイヤーの実子ほか家族には恨まれれます。ここからがカスパーのすごいところです。ただ、弁護を引き受けたのに、その肝心のファブリーツィオがほとんど黙秘するので、なかなか真相に踏み込めません。

検察側や裁判官も、この事件はすぐに決着がつくとたかを括って、懸命にもがくカスパーを嘲笑うかのように振る舞います。

そんな中、意外なことに・・・・・・・

ま、あの時代、実際に同種の”事件”がイタリアでもフランスでも起きていたのです。つまりナチスvs.彼らが駐屯する村人たち、という構図です。パルチザンにドイツ兵が殺されたら10倍にして仕返しをすると言う、とんでもなく恐ろしいことが山ほど起きていたはずなんです。(最も傷ましい凄惨な事件となったのはフランスの小村、オラドゥール=シュル=グラヌで、村民全員が殺されました!)

この映画も後半、そこに焦点が当たります。そして、結末はだれにとっても驚くべきものでした。ついでにドイツの刑法に関する闇まで暴かれることに。