220720 Elvis 2時間40分 脚本・監督:バズ・ラーマン
これまで数々のエルヴィス作品が生まれ、結構見ていますが、本作はその集大成的な作品になっているかと思います。幼少期から描かれていて、なぜ彼があのような演奏スタイルにたどり着いたのか、その辺を丁寧に描いていると思います。貧困家庭に生まれ育ったことが後の天才を産む結果となったのがちょっと皮肉でもあります。
我々世代はまさにエルヴィスでロック音楽に夢中になったわけで、出てくる歌がどれも懐かしく、ほとんど夢見心地の2時間半でした。彼を演じたオースティン・バトラーが顔こそあまり似ていませんが、十分に研究しつくしたらしく、歌う場面はもうエルヴィスが乗り移ったかのごようでした。
彼を裏で操ったのがオランダ系無国籍・無責任男のトム・パーカー大佐と名乗る、見るからにうさんくさい男ですが、天才的に商売センスには長けていて、エルヴィスの将来性をたちまち見抜いて、彼のマネージャーとして売り出すことに成功するのですが、途中でさすがにエルヴィスも彼の悪辣ぶりに気づき、最後は決別するというのが全体の流れです。
途中、軍隊入りして2年間のドイツ駐留、そこでプリシラと恋愛関係になったり、キング牧師、ロバート・ケネディー暗殺事件なども絡めて、劇的に展開されます。意外に実写フィルムの使用場面は少ないようでしたが、最後のアンチェインド・メロディーの弾き語り部分は実写フィルムでした。
バトラーも熱演でしたが、大佐を演じたトム・ハンクスが凄かった!今回事前情報ほぼゼロ状態で見に行ったこともあり、大佐を演じている俳優が誰か、途中までわからなかったほどでした。メイクに5時間もかけたというだけあって、みごとに変貌しています。目だけは変えられませんから、目元でトム・ハンクスと分かった次第です。狡猾で、狙った獲物は外さない、そしてゲットしたターゲットからしぼれるだけ絞り尽くすという役柄を実に見事に演じていました。
ソロ・アーティストとして史上最も稼いだのがエルヴィスということのようですが、栄光の代償はあまりにも大きすぎたと言えます。映画の中でも自身がつぶやいていますが、脚のない鳥のようだと。すなわち飛び上がったら、降りることはなく、ただ飛び続けるのみ。最後は薬にすがり命を縮め、42歳で飛ぶのをやめたのでした。