ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「母へ捧げる僕たちのアリア」@AmazonPrime

240813 Mes frère et moi (兄たちと僕)仏 2021 1h48m 監督:ヨアン・マンカ

舞台となる町は特定されていませんが、マルセイユ近郊のようです。(撮影はセートゥだったようですが・・)どうやら、一家はアルジェリア移民のようです。

主人公は↑の男の子、ヌール(マエル・ルーアン=ブランドゥ)といいます。華奢な体つきから日本風に言えば小学4年生ぐらいでしょうか。三人のお兄さんがいるのですが、どうも一家はいい暮らし向ではなく、兄ちゃんたちは多少悪事にも手を出しているようです。

でも、純真なヌールは、彼なりの善悪の基準があるらしく、兄ちゃんたちのようにはならないように自制しているように見えます。歌が、それもオペラが好きで、重病らしき母親が若い頃音楽家を目指していたようなので、寝たきりの母親にしょっちゅうオペラを聞かせてあげる優しい子供なのです。

三人の兄たちは音楽には無縁、ばかにしているようにすら見えます。ヌールはたまたま近くにオペラ教室を開いているサラ(ジュディット・シュムラ)を訪ねます。サラはヌールがいい音感をしていることに気づき、熱心に指導しようとしますが、兄たちに反対され、教室に通えません。

映画はヌールの視点で描かれています。悪さをしたり、ナンパを繰り返す兄たちもヌールをとても可愛がっていて、兄弟仲はいいのです。やがて母親は亡くなります。覚悟はしていましたが。さあ、どうやって暮らしていくのでしょうか。くったくのないこの子達、南仏の明るい空気もあり、悲壮感はまったくありません。

歌の先生が長兄に託したチケット(ではないけど、「入れてあげて!」と書かれたメモ)を持って、オペラハウスに行きます。そこで、サラがヴィオレッタを演じる「椿姫」を見ます。オペラなんか見るのはもちろんこれが初めてです。敬愛する先生が歌う姿を見て、彼のすすむべき道が見えたに違いありません。

サラを演じたジュディット・シュムラさん、実際に映画の中で歌ったようです。女優業だけでなく、歌の勉強もしていたので、こんな離れ技をやってのけたのでしょう。

とてもほのぼのする作品でした。それにしても、ヌールを演じた子役が可愛いです。大昔に見た、指揮者ロベルト・ベンツィの子供時代を描いた「栄光への序曲」の主人公を演じた子役に重なって見えました。

それにしてもこの邦題はいただけません。あまりにも内容とは違いますから。