ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」

180509 I, TONYA  米 120分 監督:クレイグ・ギレスピー、製作・脚本:スティーブン・ロジャース 

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主役を演じたマーゴット・ロビーが自ら製作陣に名を連ねている。本物のトーニャとは似ても似つかないし、背もかなり本人より高いのだが、この役には相当入れ込んだようだ。

トーニャ(マーゴット・ロビー)と元夫、ジェフ(セバスチャン・スタン)へのヴィデオインタビューという形式でストーリーが展開する。母親ラヴォナも同様にインタビューで過去をフラッシュバックで振り返りながら、トーニャについて語る。

1994年の”ナンシー・ケリガン襲撃事件”は当時日本でも結構大きく報じられたので、よく記憶している。トーニャの当面の対戦相手であるケリガン心理的ダメージを与える計画で、トーニャの当時の夫たちが仕組んだ計画がどこかで思わぬ方向へ。実際にケリガンの膝に打撲を加えるという顛末となり、大騒動に発展。

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⬆︎若い頃のトーニャは結構キュートだった。右はナンシー・ケリガン(リレハメルでの銀メダリスト)

裏で何が起きていたのか、本作はそれをつまびらかにすると同時に、トーニャ・ハーディングの育った環境や、モンスター・マザー⬇︎との愛憎を絡ませて、描いている。

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⬆︎この母親、トーニャにスケートの才能を見出し、将来、彼女をスターにして一稼ぎしようと思ったか、稼ぎのほとんどをトーニャのスケートに注ぎ込む。口汚く実の娘を罵り倒すところは、ほとんど正視に耐えないほど。日本人の感覚では、到底無理。娘から最後はモンスター呼ばわりされるのはむべなるかな。

演じたアリソン・ジャニー(59)は、少女時代、フィギュアスケーターを目指すも、骨折で女優業に転じた過去を持つというから、面白いキャスティングだ。本作で初めてアカデミー助演女優賞のノミネートを受けた。

それと見どころはスケートのシーンで、いくら特訓を積んでも実際に回転したりするのは到底無理だし、事故にも繋がるから、そこはCG特撮が威力を発揮、ほとんど違和感のないシーンを作り出した技術は賞賛に値する。

トーニャはアルベールヴィル(1992)とリレハメル(1994)の2度のオリンピックに出場するものの、メダル獲得には至らなかった。伊藤みどりについで史上二人目となるトリプル・アクセルを決めたスケーターだが、その得意技は不発に終わったからでもある。

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リレハメルでの有名なシーン。靴紐がゆるんだから、もう一度やらせて欲しいと涙ながらに審判団に訴えるトーニャ。

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⬆︎実際の映像

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ラストシーンはなんとボクサー姿。右下にあるのは、パンチを食らった際に、飛び出したマウスピース。左目はほとんど塞がった状態。それでも、ここから立ち上がって、相手に向かっていく闘志を見せる。

その後、総合格闘技にも登場したらしいが、今は7歳の娘と静かに暮らしているらしい。

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引退してすっかり太ってしまったトーニャ。それでも幸せそうだ。

#36 画像はIMDb、及びウィキペディアから。